映画『イニシエーション・ラブ』(ネタバレ有り)あらすじ、見所、視聴可能な動画配信サービスをご紹介!

映画「イニシエーション・ラブ」は2004年に出版された作家乾くるみの小説を原作とした作品です。
タロットカードの6番「恋人」を題材としたタロットシリーズの中の一作で、1980年代後半を舞台としています。

2015年に松田翔太、前田敦子をキャストに迎え、堤幸彦監督で映画化しました。恋愛をテーマにした作品ではありますが、ミステリー要素を含んだ不思議な作品です。
そのため、2005年版の本格推理ミステリ・ベスト10で第6位にランクインしています。
小説のカバーには「最後から2行目(絶対に先に読まないで)で、本書は全く違った物語に変貌する」と書かれ、映画冒頭でも「本作には大きな秘密が隠されています。劇場を出た後も、これから見られる方のためにどうか秘密を明かさないでください」と注意書きがされています。

さらには映画のポスターにも「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」と大きく書かれています。いったいこれからどんな話が始まるのか、見る側の好奇心と想像力は掻き立てられ、ワクワクドキドキしてしまいます。

あらすじ

全ての始まり(sideA)

舞台はバブル真っ只中で日本中が浮かれていた1980年代の静岡県です。
主人公の鈴木夕樹は無口でメガネで、ちょっと太った冴えない数学科専攻の男子大学生です。

ある日人数合わせで参加した合コンで成岡繭子に出合い、恋に落ちます。鈴木は恋に奥手なタイプですが、ふとしたきっかけで繭子と電話番号を交換する事に成功します。
それから2週間、何度も受話器を手にとっては、元に戻し、手にとっては元に戻しを繰り返し、やっとの思いで繭子に電話を掛けると、実は繭子も同じように自分を気にかけていたということを知り、何とかデートにこぎつけます。たがいに読書好きであることが発覚して本の貸し借りをするようになり、さらに食事などのデートを重ねるようになっていきました。
次第に「たっくん」(夕樹の夕が片仮名のタにも見えることから)、「まゆちゃん」と呼び合うようなり、親密になっていきました。そんな中、合コンと同じメンバーが参加したテニスの最中、繭子がほかの男性と話しているのを見て鈴木は嫉妬を覚えます。また繭子も、鈴木が繭子の友達の女性と話しているのを見て嫉妬していました。

この一件がきっかけでふたりは互いの思いを確認し、ついにお付き合いを始めることになります。
繭子は決して派手というわけではありませんが、かわいくておしゃれで清純そうで、鈴木からはとても華やかな女性に見えていました。
そんな繭子に釣り合う男になろうと、鈴木は自分磨きに精を出すようになります。繭子からのアドバイスを参考にし、メガネをコンタクトに換え、服を新調し、ダイエットをし、運転免許を獲得しました。
半年かけて、痩せてかっこよくなった夕樹はめちゃくちゃイケメンでした。たっくんとまゆちゃんはデートを重ね、クリスマスイブもホテルでディナーをするなど、二人恋人同士の幸せな時間を過ごしていました。

転機(sideB)

大学卒業後、鈴木は地元静岡の企業に就職します。あるとき、鈴木に東京の親会社への出張の話が持ち上がります。
新入社員の中から成績優秀者を選び東京に派遣するという会社の方針のため、鈴木は断ることはできません。

鈴木は繭子と毎週会いに来ることを約束し、東京に向かいました。しかし慣れない東京での日々や仕事の忙しさ、毎週東京と静岡を往復する日々に鈴木は徐々に疲弊していってしまいます。
そんな時東京での同僚で見た目も中身も完ぺきな女性、石丸美弥子と仕事を通じ意気投合し、親しくなっていきます。そんな中、3週間ぶりにあった繭子から妊娠の可能性を告げられます。
鈴木は動揺しながらも意を決して結婚を申し込みますが、婚前交渉があったことを親に知られたくないと繭子に断られてしまい、結局堕胎することになってしまいます。

気持ちのすれ違いが続く中、鈴木は気を紛らわそうとより一層仕事に精を出すようになります。次第に静岡から足が遠のき、さらに美弥子から自分への好意を告げられ、鈴木自身も美弥子へと気持ちが傾いていきました。
それでも繭子への罪悪感から美弥子からの好意を断り続けていた鈴木ですが、ある時飲みの席で美弥子から「イニシエーション」という言葉を聞かされます。
この本作品のタイトルにもある「イニシエーション」という言葉は「通過儀礼」という意味です。美弥子は自分が元カレからいわれた言葉を引用し、鈴木にこう告げます。「その恋はあなたにとってイニシエーション(通過儀礼)だったのではないか」と。
そしてもしそうであれば、自分にもまだ望みがあると。さらに「変わることは悪いことではない」「考えを変えないことは成長を止めること」と鈴木を諭します。

終わりと始まり(sideB)

そんな折、義務感を振り絞り、鈴木は繭子に会いに行きます。繭子と直接会い、まだ自分が彼女を好きなことを再確認すると、毎週会いに来るのは負担が大きいから今度から隔週にしたいと繭子に頼み、繭子もそれを了承します。
しかし、美弥子との関係も変化していきました。ショッピングに誘われ、そのままの流れで関係を持ってしまいます。

ついに鈴木は繭子と美弥子、静岡と東京で、二股をかけることになってしまったのです。次第に、繭子への思いは薄らぎ、美弥子への気持ちが大きくなっていく中、ついに、鈴木はある失態を犯します。
繭子に対し、「美弥子」と呼んでしまったのです。二股を疑い問い詰める繭子に対し、鈴木は逆切れし、繭子の部屋を飛びだしました。1年半続いた恋愛のあっけなく、最悪な幕切れとなってしまいました。それから数日後、繭子から贈り物が届きます。それはかつて鈴木が繭子にあげた指輪でした。

その後、鈴木は美弥子との交際を本格的にスタートさせます。さらに美弥子からクリスマスを家族と一緒に過ごしてほしいとまで言われました。鈴木は繭子と過ごすため静岡のホテルのディナーを予約していたことを思い出し、キャンセルしなければと考えます。

そんなある日、会社での飲み会後、鈴木は美弥子へと電話を掛けようとします。しかし何度かのコール音のあと、電話から聞こえてきた声に思わずフリーズしてしまいます。
電話に出たのは繭子で、しかも「たっくん?」と呼びかけてきたからです。あろうことか、美弥子に電話をかけるつもりが、間違えて繭子にかけていたのでした。そして、もう別れたはずなのに、「たっくん」と呼びかけてきた繭子に言葉にできない複雑な思いを抱きます。

クリスマスの日、鈴木は美弥子の家に招待されていました。美弥子の両親からは出身や、大学ではどんなことを学んでいたのかなど聞かれ、美弥子からフォローしてもらいつつ、福井出身であることや、大学では物理を専攻していたことなど答えます。
緊張しながらの美弥子の両親との食事を終え、美弥子の部屋に上がり、2人きりになったところで、鈴木はやっとくつろぐことができていました。

もしかしたら自分はこのまま美弥子と結婚するのではないかと考える一方で、頭の片隅では、繭子のことを考えていました。
かけ間違えた電話口から聞こえてきた「たっくん」という自分を呼ぶ声がどうしても頭を離れなかったのです。
最悪の別れ方をし、もう何か月もあっていなかったのにもかかわらず、さも当然のように、「たっくん」と呼びかけてきた繭子。

もしからしたら繭子は自分と別れたと思っていないのではないか、まだ自分を想って、待っているのではないかと、どうしてもそう考えずにはいられませんでした。
そんなことはないという美弥子の言葉を制し、鈴木はついに石丸家を飛びだし、静岡へ向かいました。

衝撃のクライマックス(sideB)

もしかしたら、繭子があの思い出の、一緒にクリスマスを過ごしたあのホテルで自分を待っているのではないかという衝動に駆られ、静岡へ向かって車を飛ばした鈴木。一方石丸家では、鈴木が急に帰ってしまったことを、美弥子は両親にうまく言い訳をしていました。そして、父親に鈴木の下の名前を再度問われ、こう答えます。「辰也。彼の名前は鈴木辰也君。」

その頃鈴木も、思い出のホテルに到着しました。
あたりを見渡すとなんと、そこには繭子がいたのです。自分の考えが当たったことに驚きつつ、彼女に声を掛けようと歩み寄った矢先、男性とぶつかってしまいます。
2人の男性がぶつかってしまったことに気付き、こちらに歩み寄ってきた繭子。
しかし、彼女が「たっくん」と呼び、「大丈夫?」と声をかけたのは、鈴木ではありませんでした。繭子が駆け寄ったのは、鈴木がぶつかったもう一人の男性の方だったのです。鈴木は訳が分からず、呆然としてしまいます。
そして繭子も、「たっくん」とぶつかったもう一人の男性(鈴木)に声を掛けようとして思わず、立ち止まってしまいます。「たっくん?」と。

ラスト5分。ここで物語は最初に戻り、時間ごとの事の経過を説明してくれます。

ネタバレと解説

「たっくん」が二人。最初に出てきた、合コンで繭子と知り合い、のちに付き合いだす冴えない男性の名は「鈴木夕樹」です(sideA)。「たっくん」とは繭子が「夕」の漢字が、片仮名の「タ」にも見えると言い出し、つけたニックネームでした。
そして、物語中盤で繭子と最悪の別れ方をし、東京で知り合った同僚の美弥子の家で売りす舛ディナーをしていた男性の名は「鈴木辰也」でした(sideB)。さてこれはどういうことなのでしょうか。

答えはシンプルです。繭子自身が二股をかけていたのです。
物語の中であたかも一人の男性のように描かれていた「たっくん」は実は、繭子が二股をかけていた「鈴木夕樹」と「鈴木辰也」の二人の男性のことを指していたのです。
「鈴木夕樹」にわざわざ「たっくん」というニックネームをつけたのは、うっかりもう一人の彼氏と名前を呼び間違えないようにするためだったのです。そしてこの出来事はすべて同じ1年の間に起こったことでした。
時系列順に整理していきたいと思います。

まず合コンで繭子と夕樹が知り合ったころ、すでに繭子は辰也と交際をしており、東京と静岡の遠距離恋愛中でした。辰也が美弥子と親しくなっていったころ(繭子との二股)、繭子は夕樹のことを「たっくん」をいうニックネームで呼ぶようになり、親しくなっていきます。なんどもいいますが、このニックネームは二股がばれないようにするための繭子の策でした。

そして辰也は繭子から妊娠の可能性を告げられます。繭子は夕樹とも交際をスタートさせているし、辰也は美弥子とのことがあります。二人の思惑が重なった結果、堕胎することになりました。そのころ繭子は夕樹とのデートを体調不良を理由にキャンセルしています。
実はこれは体調不良ではなく、堕胎手術のためでした。その後、夕樹とデートしたとき、関係を持ちます。この時の行為は、もちろん繭子にとっては初めてではありません。しかし、堕胎手術後だったため、違和感があり、それを初めてだからとと夕樹にうそをついていたのです。

その後、辰也の名前呼び間違え事件をきっかけに、辰也と繭子は破局し、繭子から指輪が返されました。
そして辰也は繭子と過ごすために予約していた静岡のホテルをキャンセルします。その結果、たまたま同じタイミングでホテルに電話を掛けた夕樹は、奇跡的に予約を取ることができました。そしてクリスマスには、繭子はホテルで夕樹と過ごし、辰也は美弥子の家で過ごすことになりました。そうなるはずでした。ここからは映画オリジナルの展開となります。
あろうことか、辰也は繭子の様子が気になり、静岡のホテルに急行します。そしてなんと、二人の「たっくん」が遭遇してしまいます。繭子が「たっくん」と呼ぶ別の男性の登場に辰也と夕樹は混乱してしまいます。そして、繭子と、出会ってはいけないはずの二人の「たっくん」の3人の画で物語は終わります。

この物語は途中までは、冴えない大学生たっくんが繭子に釣り合う男になるため、自分磨きを頑張り、イケメンに変身、しかし東京出張が決まり、遠距離恋愛になると気持ちが離れてしまい、たっくんは二股の末、繭子を捨てた最低男の話のように見えます。
しかしラスト5分ですべてが覆ります。二股をかけていたのは繭子も同じだったからです。繭子は二股がばれないように、うまく嘘をつき、やり過ごしていました。結果、どっちもどっちだったわけです。改めて繭子の言動を見ると小悪魔だなーと思います。

夕樹に対し初めての彼氏ではないのに、あたかも初めての彼氏であるかのような言動をしていますから。また、sideBでの会社の飲み会の後、美弥子に電話を掛けるつもりが繭子にかけてしまい、聞こえてきた「たっくん」と呼びかける声に鈴木が動揺するという場面があります。しかし、繭子は鈴木辰也に対し、「たっくん」と呼びかけたわけではありませんでした。繭子は「鈴木夕樹」が電話をかけてきたと勘違いし、「たっくん」と呼びかけていたのです。結局、辰也にとっては繭子が、繭子にとっても辰也が、それぞれがそれぞれにとっての「イニシエーション・ラブ」、大人の階段を上るための通過儀礼的な恋愛に過ぎなかったわけです。一番かわいそうだったのは夕樹でした。

後から振り返ると、二人のたっくんが別人であるという伏線はいくつもありました。例えば合コンの席で、たっくんは数学科専攻と言っているのに対し、石丸家でのクリスマスディナーで美弥子の父親から聞かれたとき、たっくんは物理を学んでいたと答えています。勘のいい人なら気付いていたかもしれませんね。しかし、意外と気づかないものです。私自身こういった矛盾(伏線)には全然気がつきませんでした。
そして思わず、もう一度映画を観てしまいました。全てわかってから観ると、1回目とは別の見方ができ、面白さが倍増しました。

キャストも非常にはまり役だった思います。特に前田敦子さんは繭子にぴったりでした。大きな目で少し高い声で、かわいらしく微笑まられたら騙されてしまいそうです。いかにも純粋そうで、それでいて、二股にあまり罪悪感を感じていなさそうな繭子の演技には本当に騙されてしましました。
また、sideAとsideBで全く似つかない二人の人物を「たっくん」役に起用し、自分磨きの結果、半年かけてブサイクからイケメンに変身したという演出もお見事でした。この大胆ともいえる演出によって多くの観客が騙されたと思います。

「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」大げさすぎるように聞こえたこのキャッチコピーは決して嘘ではありませんでした。恋愛作品に見せかけ、巧妙に張り巡らされた伏線によって、最後の最後にどんでん返しがあったこの作品は、まさしく、ミステリー作品といえる代物でした。

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